姉は独身である。もうそこそこの年齢なので、生涯独身を貫くに違いない。今のところ元気な両親も、姉がもっと若い年齢の時は、いろいろと手を打っていた。

勝手に電話がかかってきたお見合いの会社に登録したり。

お見合い会社は、とてもうまく老夫婦の心の隙間に滑り込む。今しかない、今が一番若いと甘言を翻す。焦りをおおいに焚きつけられた老夫婦が、新宿のお見合い会社へ訪問するのは、その翌週だったか。

敵の陣地へ踏み込んでしまえば、もう終わり。
あれよあれよというまに、契約させられ1年間のお見合いターンが始まる。問題なのは、そこに本人が絡んでなかったことである。契約を聞いて、激怒したのは姉である。

しかし、もうキャンセルができない。無理やり1年間人を紹介されたり、選んだりしていた。思えば、あれが両親(特に母)と姉に決定的な溝を作ったようだ。それ以降、そういった話はアナフィラキシーショックばりにアレルギーがでてしまい、結果、誰ともつがうことはなく、アラフィフである。

俺は結婚している。
結婚しているのがいいとは限らない。自分の時間は奪われるは、常に経済的な心配を抱えるわで独身貴族がうらやましくなる時もある。しかし、近頃の姉をみると結婚いや、せめて相方となる人物は絶対いたほうが良いと思わざるを得ない。できれば、子供もいるに越したことがない。

それは最近姉のこんな言動を聞いたからである。
ジョークめかしてだが、親より先には死ねないが、親が死んだら早めに死にたい。なんというか、寂しいじゃないですか。親以外に自分を繋ぎとめておくものがないのかよ?と。とにかくここ最近は悲観的な色合いが濃い。(ちなみに病気ではない)そういうのを聞くと、怒りとかではなく、何とも寂しいなぁと感じる。

自分の子供がこんなことを思っていたら、なんともいえない。
でも、もし自分が独身であり、好きな仕事にもついていなかったとしたら同じように考える可能性がある。たまに、独身だったらどんなかんじだろうか?と考えることがあるが、姉はかなり忠実なモデルである。血縁者でもあるし。

寂しい言葉を吐くこのパラレルな自分に、なにかかける言葉があるだろうか?今の自分には残念ながらない。ある程度の年齢を過ぎてしまえば、いうべき言葉はなくなるのだ。実現可能性が低いことをいっても上滑りしてしまう。

少し前なら、だれかいい人…という万人向けの解決策をいうのだろう。
誰かいい人見つけて…馬鹿らしいくらい陳腐な言葉だが、やはりそれなりに理にかなった解決策であることがこの年になって初めてわかりつつある。

人間一人は宇宙である。どこかで聞いた言葉である。もしかしたら、勘違いかもしれないが、こんな意味である。人間一人は宇宙と同じくらい未知で、不可思議で、エキサイティングである。つまり、自分とは別の人間と暮らすのは、宇宙に住むのと同じくらいの経験を得られる。

大げさだろうと思うかもしれない。しかし、結婚してがっつり一人の人と一緒にいる身としてはこの言葉は、すんなり入ってくる。遠くから見たら、キラキラ輝く星のようなコスモだが、そこに住むと、なんだか酸素が薄かったり、えらい天災に見舞われたりする。そんな経験から、この星で快適に暮らす術を学ぶ。そうすると、楽しくなったりするのだ。

やっと、この星(宇宙)に慣れた~と思ったら、木陰から未知の生命体が現れたりもする(子ども)。天手古舞である。しかしながら、とにかく、人と暮らすというのは、飽きがこないことは間違いない。もちろん、この宇宙もう無理だわ~と、宇宙人を連れて、離脱する人も多いだろう。それはそれで、良い経験になるかはわからないが、何もないよりはずいぶんマシなのではないだろうか。