My Little Loverの「Hello, Again 〜昔からある場所〜」をご存じだろうか。いわずと知れた名曲である。1995年にリリースされ、たちまちヒットした曲である。今聞いても、迸る良質なメロディーと歌詞の切なさ。しかしながら、この曲は俺のある記憶にびったり張り付いている。だから、この曲のイントロが流れるや否やその記憶が否応なく入り込んでくる。

かつて大学生の時、俺は日雇いのバイトに精を出していた。
長期働くレストランなどのバイトは肌が合わず、すぐにやめてしまった。人間関係が嫌だったのだろう。その時は斜に構えていて楽しそうにしているバイト仲間たちの間に入っていってたまるかみたいなムードがあった、俺の中で。必然的に孤独になってしまい、つまらなくなってバイトをやめてしまう。こういった繰り返しであった。

しかし、金はほしい。
そうなると日雇いバイトである。当時、がくと、と呼ばれる学生にバイトを斡旋する場所があって、足しげくそこへ通っていたのだ。そこで出会った、高収入バイト。騒音調査24時間32000円である。24時間、なにか調査すれば32000円もらえるのである。すぐに飛びついた。

しかし、これが自分バイト史上に残る大変キッツイバイトであった。
仕事は簡単である。住居が立ち並ぶある場所に、なにかよくわからない機械を置く。そして、1時間の中で10分だけその機会を作動させ、数値を記録する。これだけ。無茶苦茶簡単だ。なにが、きついんだ?と誰もが思うのだ。しかし、これを24回続けてみろ。朝8時から翌朝の8時まで。

毎度、10分だけ機械を作動させる。あとの50分は何もすることがない。散歩をしたりもしたが、とにかく暇だ。どこかへ出かけようにも、必ず50分後に帰ってこなくてはならない。これは厳しい…と思ったのが、ちょうど12時間経過した20時であった。

ここから、あと12時間ここに居続けんのかよ…と溜息をついた俺。
夏だったので蒸し暑く、かつ蚊もいて容赦なく肌を刺しやがった。唯一の慰めは耳に挟んだイヤホンから流れるラジオだった。

そこから、頻繁に流れてきたのがこの「Hello, Again 〜昔からある場所〜」である。

深夜2時に調査場所の近くの公園のブランコに乗りながら、聞いた「Hello, Again 〜昔からある場所〜」。やさぐれた心が一瞬ふわっと優しくなれた。音楽は時に体験とリンクする。とりわけつらい時に慰められた音楽は、その体験も含めてその音楽を名曲とする。

俺にとって、この曲は騒音調査のバイトとがっつり結びついて、セットで名曲となっている。